ジェイミーの手切断はかなり計画的だった 【ゲーム・オブ・スローンズ】
シーズン3、3話でジェイミーはロックというボルトン家に仕える男に右手を切り落とされました。
ブライエニーを救うために嘘をつき、うまく騙せたと思った瞬間に右手スパンッ!と、なかなか衝撃的なシーンでしたね。
ドラマではロックがジェイミーの態度が気に食わずやったという感じで描かれていましたが、原作では少し違い、あれはかなり計画的な行動だったようです。
ただ原作を読んでも各キャラの思惑が少し分かりづらいので、順を追って紹介したいと思います。自分用にも忘れないうちにまとめたかったので(笑)
詳細は省きますが、そのへんはご了承を。
この先ドラマ/原作のネタバレあるので注意。
そもそもロックというキャラはいない
初めに言及しておくと、ロックはドラマのオリジナルキャラクターで、原作には登場しません。
ドラマでは脚本上の都合で一人二役ということがあったり(例:ジェンドリー、サンサ、ロラス等)、全くのオリジナルというキャラクターも存在するんですよね(例:オリー、タリサ、ロス等)
ということなので、ロックの元になっているキャラクターはもちろん原作に存在します。
それが、ヴァーゴ・ホウトという傭兵集団"勇武党"のリーダー。彼は敵の手足を切断することで有名なのでロックと通ずるものがありますね。
"勇武党" ヴァーゴ・ホウト
この"勇武党"という傭兵集団はエソッス出身で、"五王の戦い"が勃発した時期にタイウィンによって雇われウェスタロスにやってきました。つまりはラニスター側。
ドラマでいうシーズン2、タイウィン指揮するラニスター軍はハレンホールを拠点としていましたね。彼の軍隊の中にその"勇武党"も含まれていました。
ちょうどタイウィンがスタニスに奇襲をかけるために王都へ旅立つとき、彼はヴァーゴ・ホウトにハレンホールを託します。
ハレンホール奪回
ロブの叔父でもあり、ロブ側で戦っていたエドミュア・タリーがラニスター軍/勇武党に占拠されていたハレンホールを奪回しろという命令をルース・ボルトンに下します。
少し話が逸れますが、原作ではルース・ボルトンは別行動っていう感じで、ロブ達とほとんど一緒にいないんですよね。
なのでロブやキャトリンなどはハレンホールを訪れていません。
エドミュアからの命令を聞いたルース・ボルトンは自分の部下を失わずにハレンホールを奪い返すために、ハレンホールを占領していたヴァーゴ・ホウトと契約を交わします。
「私達側についたら褒美として、戦争が終わった暁にはハレンホールを与えるぞ」、と。
ドラマでも度々触れられているように、傭兵は雇い主を裏切るということで評判。
これは"勇武党"も例外ではなく、ブラックウォーターの戦いでスタニスが勝つと予想していたヴァーゴ・ホウトはラニスターを裏切り、ボルトン側に寝返りました。
で、結局ボルトン軍が"勇武党"と手を組み、ほぼ無血開城という形でハレンホールを奪回し(この奪回にはアリアも貢献していますが…詳細略)、そこに残っていた少数のラニスター兵を殺害。
形勢逆転し、ハレンホールはルース・ボルトンが支配することになります。
急展開
ロブはこのときいくつかの戦を連勝しており、スタニスにはレンリーの兵が多くついたことから、次第に彼ら(ロブ/スタニス)がラニスターを破るだろうというヴァーゴ・ホウトの予想はあながち間違いではなかったのだが…。
ここでヴァーゴ・ホウト達にとって最悪な事態が起きちゃいます。
まさかのラニスターがスタニスを破ってしまう。
奇襲+タイレル家の兵のほとんどが復讐のためラニスター側についたのが大きな勝因だったのですが、ラニスターが負けると見越して彼らを裏切った"勇武党"は一気に窮地に追い込まれてしまいました。
タイウィンがこの反逆を赦免するわけないので…どう処罰されるかは…想像したくないね(笑)
そんな絶望的な状況の最中、"勇武党"はキャトリンの手によって逃されたジェイミー&ブライエニー御一行を偶然発見。
逃げ道の確保
さて、ここまでジェイミーを捕まえるところまでの経緯を紹介しました。
先程も言ったように、ヴァーゴ・ホウトはタイウィンを裏切ってまでボルトン側に肩入れ。
しかし、状況が一変し一気にラニスター優勢。ヴァーゴ・ホウトはタイウィンの復讐を恐れたのです。
そこで目をつけたのがカースターク家。
経緯はドラマと原作で若干異なるものの、リカード・カースタークが息子を失った原因はジェイミー。このことからカースターク家はジェイミーを憎んでいましたね。
カースタークは逃亡したジェイミーを捕まえた者にアリス・カースタークとの婚約を約束していました。
※ちなみにアリス・カースタークはシーズン7で登場し、ジョンに赦免された女の子。
つまり、ヴァーゴ・ホウトはアリス・カースタークと婚約すればカーホールド城の城主になれます。
ラニスター家が北部まで軍を進めたことは過去にありません。
カーホールド城はラニスターの支配が及ばないこの最果ての地にあるので、逃げ道/隠れ家として最適なんですよね。
しかし、アリス・カースタークとの結婚にはジェイミーを捕まえて差し出せばいいだけです。
ジェイミーの手を切断する理由は無いようにみえるが…。
ということでやっとこ本題↓
手を切る必要はあったのか?
必要あるかないかでいうと、ありました。
なぜならジェイミーの手を切ることによって損する人がいるから。
それがルース・ボルトン。
アリス・カースタークとの婚約にはジェイミーが不可欠なので、彼を手元に置いておく必要があります。
しかし、ヴァーゴ・ホウトはルース・ボルトンがロブを裏切ってタイウィンと組んでいるということに薄々気づいていました。
なので彼にはルース・ボルトンがジェイミーをタイウィンの元へ送り返してしまうのではないか、という不安材料があったんですね。
そんなことされたら折角の逃げ道を確保するチャンスを逃してしまいます。
ヤバイ!と感じたヴァーゴ・ホウトはジェイミーをキープするために妙案?を思いつきます。それが手の切断。
ヴァーゴ・ホウトはラニスターを裏切って以来、ルース・ボルトンのために働いていました。
そんなルース・ボルトンの部下でもあるヴァーゴ・ホウトが、ジェイミーの大事な剣を握る右手を切断したとなると、その責任はルース・ボルトンにのしかかりますよね。
まぁ要するにルース・ボルトンにも罪があるように映るということ。
そうなると当然ボルトンとラニスターの関係はパーになり、ルース・ボルトンはジェイミーを送り返すのを躊躇うだろう、というのがヴァーゴ・ホウトの算段。
つまり、手を切断したのはジェイミーをボルトンによって売り飛ばされないようキープするためだった。
ルース・ボルトン恐ろしや
上記のヴァーゴ・ホウトの策略はルース・ボルトンの口から語られたので、彼は全てお見通しだったということになります。
なので結局ヴァーゴ・ホウトの策略はうまくいきませんでした。ドラマでもジェイミーは王都へ送られていましたよね。
あの策略が失敗したのは、ルース・ボルトンが普通の人なら絶対しないようなことをしたからです。
それはジェイミーを信じて頼ったということ。
当時(というか今も)キングスレイヤーのジェイミーを信じるヤツは大馬鹿者呼ばわりされていました。
彼は、「その手の切断は私とは何の関係もないということをタイウィンに伝えてくれるなら王都へ送り返す」という条件をジェイミーに提示しましたよね。
この描写はドラマでもありましたが、この会話にはカットされた続きがあります。
原作から引用しますと、
ジェイミー:「もちろんこの手の仕業はあなたではないと父上に伝えます。そして、いかにルース・ボルトン公が私を丁重に扱ってくれたか、ということもね。」
ルース・ボルトン:「あなたの約束を信じますよ、サー。」
ジェイミー:「お、それはなかなか聞かない言葉だな。」
ジェイミーですらルース・ボルトンの発言に驚いているというこのやりとり、結構好きなんですよね(笑)
こうして1つの約束の元、ルース・ボルトンはジェイミーを開放。
ジェイミーと一緒にクァイバーンが同行したのも、道中ジェイミーのケアができ、彼が死なずに王都へ辿り着けるようにというルース・ボルトンの計らいです。
で、王都へ戻りタイウィンと対面したジェイミーは約束通り、手の切断はタイウィン自身が雇ったヴァーゴ・ホウトの仕業であると伝え、ボルトンの名には触れませんでした。
ルース・ボルトンの復讐
ルース・ボルトンもタイウィンと同様、裏切りを容易く許すような男ではありません。
そんな彼を欺こうとしたヴァーゴ・ホウトに復讐ともいえることをします。
ジェイミーを開放した時には既にタイウィンとレッドウェデイングの計画していました。
更にこの時、ルース・ボルトンはハレンホールをまた奪い返すためにマウンテン率いる部隊を向かわせるつもりだということもタイウィン本人から直接聞いています。
そこでルース・ボルトンはエドミュアの挙式に出席するためにハレンホールを発つ時、当初の契約通りヴァーゴ・ホウトにハレンホールを与えました。
ただし、マウンテンが奪回しに来るということは伝えずに。
ルース・ボルトンはヴァーゴ・ホウトを見捨てたわけです。
後にマウンテン部隊がハレンホールに到着。
そしてマウンテンがヴァーゴ・ホウトの手足を切断するという皮肉な結果に終わりました。
まとめ
簡単にまとめると、
ヴァーゴ・ホウトが指揮する"勇武党"は元ラニスター側。
↓
ブラックウォーターの戦いでラニスターに勝ち目がないと思ったヴァーゴ・ホウト達はボルトン側に寝返る。
↓
まさかのラニスター勝利。
↓
タイウィンの復讐を恐れている時にたまたまジェイミーを捕まえる。
↓
そしてカースターク家がジェイミーを捕らえて差し出した者に褒美としてアリス・カースタークとの婚約を約束していることに目をつける。
カーホールド城はラニスター家の脅威が及ばない位置にあるので隠れ家として最高。
↓
ヴァーゴ・ホウトはボルトンがタイウィンと共謀しているということに気づき、ジェイミーがタイウィンの元へ送られてしまうのではないかと心配になる。
そうなった場合、アリス・カースタークとの婚約は水の泡。
↓
ボルトンの部下でもあるヴァーゴ・ホウトがジェイミーの手を切断することで、ボルトンにも非があるようにみせ、ボルトン&ラニスターの関係を引き裂こうとする。
そうすればジェイミーは送られずに手元に残る。
↓
しかしボルトンは「この手の仕業はボルトンのせいではないと父上に伝える」というジェイミーを信じて王都へ送り出す。ヴァーゴ・ホウトの計画失敗。
↓
ルース・ボルトンは自分を裏切った復讐としてヴァーゴ・ホウトに危機が迫っていることを知らせずに見殺しにした。
おわり
うーん、こうしてみるとヴァーゴ・ホウトも散々ですよね。
よりによってウェスタロスで敵に回したくない人物トップ5に入るだろう2人に出会ってしまったんだから(笑)
それはともかく、この一連の流れは間違いなくドラマでも是非とも採用してほしかったプロットの1つなのですが、省いた事情は一体何だったんだろう?
ジェイミーがブランを不自由な身体にする→そのジェイミーはロックによって不自由な身体にされる→そしてロックはブランが操作するホーダーに殺される、というサイクルの方を優先したのかな?
まぁそれはそれでよく出来ていると思いますけどね。