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Beautifully Done In Every Way【パラサイト 半地下の家族/Parasite ネタバレ感想】

 

 

普段は海外ドラマに特化したブログと化していますが、映画の方も劇場公開の新作から旧作までそこそこ見てます。その99%は洋画ですけどね。

 

ということで今回はつい先日公開された『パラサイト 半地下の家族』のネタバレ全開レビュー。

この映画はパルムドールを獲った時から注目していましたが…相変わらず日本公開日が遅いのなんの。

そんなこんなで項垂れていたってのもあり、公開日に速攻で見てきました。

 

なんでまた急に映画レビュー記事を出すことにしたのかという経緯ですが…この作品は私がいままでの人生で見た映画の中でもトップ10に入るぐらい色んな点で衝撃的だったので記憶が鮮明なうちに感想をまとめておきたくなったのです(笑)

 

 

下記重大なネタバレを含むので未視聴の方は注意。絶対先に本作を見てください!!

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From IMDB

 

感想

 

パラサイトが各地で賞を獲っているのはもちろん知っていたので、見る前からかなり期待感が高まっていました。

過度な期待は良くないと思いつつも劇場に足を運び、見終わった直後の率直な感想としては…全く期待を裏切らなかった。というか個人的にはその期待を遥かに上回ったクオリティでした。

 

この作品を"階級闘争"と言い表すのはちょっと語弊があるというかオーバーかもしれませんが、"富裕層と貧困層の格差"が根底にある作品だったというのは間違いないでしょう。

貧乏な一家が身分を偽って徐々に裕福な家庭を蝕んでいく様子は正にタイトル通りで、これでもかっていうぐらい細部まで丁寧に作り込まれていた印象しかありません。

ちょっとしたセリフから描写に至るまで全体的にほとんど無駄のない仕上がりになっていたと思います。ペースも理想的で一瞬たりとも退屈だと感じませんでしたし。

 

 

気持ち弄ばれまくりの2時間

 

パク一家とキム一家、どちらも極悪非道の家族ではないというのがこれまた面白いんですよね。

パク家夫には一貫して「お前はあくまでもお手伝いだ、家族ではない」という態度や若干の傲慢さも伺えましたが、奥さんに関してはこれぞ純粋無垢っていう人でしたし。

 

犯罪を犯したキム一家ですら最後の最後まで誰にも殺意は無かったわけで。

元家政婦と取っ組み合いになっている時にキム家娘が取り出したのは包丁類ではなくまさかの。あれは吹き出しそうになった。

元家政婦を後ろ足で蹴り飛ばしたキム家母ですら地下に閉じ込めた2人の体調/食事面を心配していましたしねぇ。(私はてっきり彼女は首の骨が折れて即死していたと思っていましたが…笑)

 

そんなこともあり、リビングのテーブルの下で隠れている時にパク家父がキム家父の"臭い"に文句言ってた時のキム家父の心境を想像しただけで胸が張り裂けそうでした。

子供達の目の前であんな屈辱的な罵倒を受けるとか…こんなの同情せざるを得ないでしょ。

しかもその後のパーティー、キム家娘が刺されて血を流しているっていうのにパク家夫は心配する素振りゼロで息子のために車を出せと命令。そして鼻をつまむ仕草というトドメの一撃…いくら温厚なキム家父でもプチッとキレてしまったと。

 

とまぁ終盤に散々キム一家への同情をこれでもかと誘っておいて、オチは「いつか出世してあの豪邸を買い取り、父を救出することを夢見る息子という構図で終わるから残酷過ぎる(笑) まぁ、あのままハッピーエンド!とならずに済んだのは個人的に満足ですけどね!

 

 

個人的に感心したツイスト

 

物語終盤にパク一家が家を空けるってなった時、ぶっちゃけ誰もが内心「キム一家がくつろいでいる時に突然帰宅して一騒動起こるんだろう」と予測したはずです。

私自身、いくらフィクションといえどあまりに唐突で都合よすぎる展開はあまり好みではないので「何を口実にパク一家は帰宅するのかな」と若干不安でした。

 

で、そのツイストこそが豪雨。

何が素晴らしいってこの豪雨、後の展開にもちゃんと影響を与えるように組み込まれており、"キャンプを中止するだけの理由"で済まなかったということ。

実際に、この豪雨こそがキム家父を怒り狂わせるきっかけの1つなったわけですからね。

 

キム家の住まいは流れ込む雨水で壊滅状態で全てを失ったも同然。

それに対して高台にある高級住宅街は被害無しということもあり、パク一家は下界の災難なんぞ知ったこっちゃないと予定通り誕生パーティーを開催、パク家妻に関しては「この豪雨で空気が澄む」と喜んでいる始末でした。

そんな戯言を運転しながら聞いていたキム家夫の怒り狂った表情は忘れられませんね。

 

 

隅々まで行き届いたディテール

 

先程から何度も「よく作り込まれている」と絶賛しているように、いくつかの伏線や一度見ただけでは到底気づかない細かな描写など相当計算されていたのではないでしょうか。

当然のことながら全ては拾い切れていませんが、私が気づいた伏線ともとれる描写をいくつか列挙すると…↓

 

☆パク家夫の「前の家政婦はよく食べる人だった。」という発言、それもそのはず彼女は旦那を匿って食事を与えていたから。

 

☆ある有名な戦い(詳細は忘れた)のようにパーティーのテーブルを配置してくれと頼んだパク家妻、そのパーティーはまさしく戦場へと変貌してしまう。

 

☆ピザの上にトマトソースをかける描写は最後のパーティーで血が食べ物の上に飛び散るシーンと重なる。

 

 

Cinematography 

 

もちろんメインのプロットの素晴らしさも去ることながら、"Cinematography"も目を瞠るクオリティだったと私は思います。

毎回この言葉を日本語訳にしようとすると適切な単語が思いつきませんが、"Cinematography"とは画角やカメラの動き、編集、照明の具合といった視覚的要素の総称で、映像作品では切っても切り離せないポイントの1つ…今作ではその"Cinematography"もピカイチだったなーと。

 

例えば豪邸内のショットだけでも、スクリーンのようなリビングの巨大窓や地下倉庫への入り口の撮り方、洪水時の街や怒涛の勢いで流れる雨水、浸水したキム家 etc…挙げたらきりが無いですよ。

特に階段や坂の存在感の強調っぷりはかなり明白でしたよね。

これももちろん富裕層は上へ上へ、貧困層は下へ下へというのを隠喩的に表現していたと。

 

そしてこの映画の"一貫性のあるCinematography"を丁寧に解説されている方がいらしたのでその動画を貼っておきますね。

www.youtube.com

縦線の使い方とかは偶然の産物感あるとのツッコミも飛んできそうですが…ここまで終始同じ手法が見受けられるってことは意図的なんでしょう。

 

 

お気に入りシーン

 

数あるシーンの中でお気に入りを1つだけ選ぶのも忍びない気もしますが、最も印象的だったのは家政婦を解雇させようと陥れる場面。

あのシーンは緊迫感、テンポ、サントラ 等…パク家妻の落胆顔で終わるまで全てが傑作過ぎました。まさにアート。

調べてみたらあの一連のシーンは7分もあったみたいなんですよね。

でも実際に見ているときは2-3分ぐらいに感じました…時間の感覚が狂うほど見惚れていたってことでしょう(笑)

 

あのシーンはディテールもかなり凝っており、本棚みたいなのが一瞬映った時、そこにはアルフレッド・ヒッチコックの写真が貼られた本?ファイル?がありました。

これはポン・ジュノ監督がアルフレッド・ヒッチコックからインスピレーションを受けたってのもあり、イースターエッグとして仕込んだんでしょうね。

 

その他にも元家政婦&旦那との取っ組み合い後にパク一家が帰宅するからと急いで片付けて料理を準備しているシーンとかも映像的には鳥肌モノだった。

このシーンの締めはあの派手に転がり落ちる元家政婦のショットでしたし…(笑)

 

 

おわり

 

まだまだ語れる余地は残っていますが、今回はこのへんで終わりたいと思います。少なくともあと一回は見直すことになるね、確実に。

とりあえず新年早々素晴らしい作品見れて大満足だったよー!という記事でした。